ありふれた時間
いったい何が悪いのよ!
そう大声で叫べれば、スッキリとするのに・・・
声で出して言うことも出来ずに、
曖昧な態度の2人に、理由を聞きだす事も、
怒る事もせず、心の中は黒いモノが溢れていく。
早足で歩き、教室へと戻れば、
午前中に一緒に回ったクラスメートが集まっており、
楽しそうに笑い合っていた。
「あ!
お帰りなさい、さん」
笑顔で向かい入れられ
「何を話しているの?」
沈んでいく気分を無視し、微笑みながら首を傾げれば、
「テニス部の話しだよ」
嬉しそうに、幸せそうに笑う顔に
「なに?なに?
どんな話し?」
無理やり作った好奇心を見せれば、
「午前中のスポーツテストで、海堂くんと一緒になったじゃない」
その話しをしていたのよ。
微笑まれ、教えられた言葉に納得し、
記憶を巻き戻してゆく。
確かに一緒になったけど・・・
そっか・・海堂くんのファンだっけ・・・
微笑みながら聞き入っている子を見ながら、
「凄かったよね。
海堂先輩」
言葉を差し出せば、
「本当だよね」
笑みを深くし、頷く。
嬉しそうで、幸せそうで、見ている自分までもが同じ感情になってき始めた。
「午後はどの先輩と会えるかな?」
期待を膨らまし、会いたいテニス部員の名前を上げていく中に、
桃城と越前の名前も挙がり、1瞬眉を潜めるが、
「そうだね。会えると良いね」
頷き、話を流していく。
最終には
「午後も頑張ろうね!」
笑い合いながら頷き合う。
この子達には手を抜くという考えはないのね・・・
まっすぐで、何事も一生懸命で・・
自分も中学生の時は、この子達と一緒だったのだろうか?
いつから、手を抜く事を覚えたんだろう・・・
大人となってしまった自分は、
子供の一生懸命に、溜め息と共に呆れと皮肉を混ぜて、
見ていたのかもしれない・・・
私、イヤな大人だな・・・
ココロの中に溜め息を付き、目を伏せた。
次々と沸き上がる感情に嫌気が差し、
振り払う様に目を開ければ、周りにいた全員に視線が自分に向けられ、
「さん、大丈夫?体調悪い?」
首をかしげながら、心配そうにかかる言葉に
慌て首と手を振り、
「大丈夫だよ!
考え事してただけ」
早口で作られる言葉に、
「そう?
辛かったら言ってね」
不思議そうになしがらも微笑まれ、
「心配してくれてありがとう」
今だ親密じゃない関係にある自分を心配してくれる人々の
気持ちに嬉しくなり、笑顔で礼を告げれば
「いいの。
私達、友達じゃない」
変わらぬ笑みのまま告げられた言葉に、
さらに嬉しくなり、
「お昼も全力で頑張らして頂きます!」
ふざけながら、敬礼をし返事を返せば、
「ヘンなさん」
笑い声を上げ、楽しそうに笑い合った。
教室の外に漏れるぐらいの笑い声は、予鈴で消され、
体育館シューズを手に持ち、教室から体育館へと移動した。
切れる事のない会話
笑い合う声
楽しくて、弾む心
小さな事でも、心から楽しくて
上体起こしをしている最中でも笑いが止まらず、
悲鳴を上げかけている腹筋を騙し、計測を行う。
「さん。
もう少しで、45cmだよ!
頑張って!!」
足を押さえている友達から声援が掛かる。
「後、2cmなの!
頑張って!」
定規を手に持ち、測定をしてくれている友達の声にも
力が入ってる。
2cmって・・・
あと少しじゃないんじゃないのぉ?
ココロの中でツッコミを入れながらも、
お腹に力を入れ、無理にでも上げれば歓声が上がり、
読み上げられた数字を理解した瞬間、力を抜き床へ身体を戻した。
辛い・・・
腹筋が・・筋が痛い・・・
グッタリとしている中、はしゃいでいる友達に立たせて貰い
今度は自分か足を押さえる番で、
自分の時の様にはしゃぎながら、声援を送りながら
上体起こしを終わらせた。
「次はどこに行こうか?」
「空いてる所に行こうよ」
「握力は?」
交わされる会話と聞き、空いている所がないか視線を走らせれば
桃城と目が合い、気まずそうな表情を見せるが、
「よぉ」
片手を挙げ、へと足を進め、
後、数歩の所で足を止め、頬を人差し指で数回掻いた後、
ポケットに手を入れ、握ったままの状態でへと差し出した。
「なぁに?」
不信感を出し、問いかければ、
「ほら、今日の昼メシのジュース代。
お前に借りたままだっただろ?」
普段と変わらない声で作られた言葉に、意味が解らず首を傾げるれば、
「もう、忘れちまったのか?
奢りてのも悪いんで返すったろ」
ほら
手を出せと言葉に意味をかぶせられ、
納得出来ないまま、受け取り、
「ありがとう」
礼を言えば、
「気にするなよ」
笑顔で返され、ココロの中で首を傾げるしかなかった。
確かにお昼にジュースは飲んだ。
でも、アレは桃城君が買ったのを、私が貰ったので、
本来なら、お金を払わなければならないのは自分であって
桃城くんではない。
いったいドウ言う事なんだろう?
手に平に置かれた百円玉を見つめていれば、
左耳から
「気を付けろよ」
桃城の声が聞こえ、振り返れば
背中越しに手を振られた。
なにを?
私は何を気を付ければいいのでしようか?
何に気を付ければ言いのか言っていこうよ、桃城君!
ココロの中の問いかけは声に出る事無く終わり、
溜め息を1つ落とした後、お金をポケットに入れ友達の元へ行った。
言いたい事はハッキリ言おうよ。
ココロの言葉に、握力で力が篭る。
「右 24kg」
その方がお互いの為だと思うのよね・・・
「じゃ、次は左で計測してね」
言う事が大雑把すぎで意味が解んない・・
何が言いたいのよ、青学のクセ者!
私は普通の人間なんだから主語も述語も使ってくれなきゃ
解んないわよ!
「左 19kg」
声に出せない怒りをブツブツをココロで言えば、
いつの間にか計測が終わっており、
「凄いね・・さん」
感心の溜め息と言葉に、苦笑いをするしかなかった。
そんな中、
歓声とどよめきに視線を動かせば、
「見て!
河村先輩だよ!」
背中を叩かれ、指を刺している方向には、
気合が十二分に篭った声が上がり、測定数値が読み上げられた。
ラケットなしでその数字ですか・・・
バーニングの時はドレぐらいなんですか?
意識を飛ばし、河村の苦笑する姿を見ていれば、
背中を突付かれる感触に気が付き、振り返れば
目に前に入る人物に驚き、体の動きが停止した。
聞こえてくるのは、友達の黄色い小さな悲鳴。
「ソレ貸して貰えるかな?」
微笑まれながら言われる言葉に、
理解が遅れ、目の前で手を振っている人物に更に驚き
体が動かなくなった。
「だいじょうぶ?」
3−6ペア・・・
なんで、ココにいらっしゃるのでしょうか?
2人で回ってるんだ・・
仲がよろしいことで・・・
他人事の様に浮かぶ気持ちに相槌を打ちかけるが、
笑われている声で我に返り、
「コレでしたよね!?」
上擦った声と共に勢い良く差し出し、1歩後ろに下がれば、
「ありがとう」
穏やかな音の礼に
「い・・・え・・」
曖昧な返事にも気を悪くする事はなく、反対に
好奇心の混じった視線に耐え切れなくなり、
「失礼します」
1礼し、数歩後ろに下がった後、
勢い良く反転し、気付かない内に場所を離れてしまっていた
友達の元へ駆け寄り、逃げる様に次へと移動した。
「さん凄いねぇ〜」
チラチラと後ろを見ながらの言葉に、
どう返事を返して言いの解らず苦笑すれば、
「何時の間に不二先輩と菊丸先輩と仲良くなったの?」
好奇心と羨ましい心を混ぜた表情に、
「計測器を貸して欲しいを言われただけだから、
何もしてないよ」
愛想笑いをしながらの返事でも、納得できないのか
好奇心の眼差しは止まず、周りにいた知らない人々の視線も感じ、
居心地の悪さを感じ、
「タイミング良く終わった私達の計測器を貸りる為に、
声掛けられただけだよ」
ワザと大きく言う言葉に、
「そうだよね・・・
私達みたいな普通の人間に、
凄い人達が声かけくれる訳ないよね」
とこか諦めの色を見せる言葉に、
この子達にとっては、
レギュラー陣はテレビに出ている有名人と同じなのね・・・
ココロの中で言葉と溜め息を落とし、落ちてしまった雰囲気を上げる為、
ワザとらしく
「さて、次は前屈でも行こうか!」
大きな声で言えば、
「そうだね」
笑顔で頷いてくれたり、相槌を打ってくれ小走りで移動をした。
「ハッ!」
気合十分の声と共に針を押し下げていく。
「さん、本当に凄いね」
羨ましそうな溜め息と言葉に
「そうかなぁ・・」
曖昧な笑みで返すものの、ココロの中では涙を流さずに居られなかった。
反復横とび、長座体前屈を終え、なんとか全部の計測を終え
体育教官に結果の書かれた紙を提出し教室へ戻る。
「早めに終わって良かったねぇ」
周りに集まった友達と笑顔で話す中、
「さんの結果を見た先生の顔。
忘れられないよねぇ〜」
「本当に」
笑いながらの話しに
「あんなに驚かなくても良いのにね」
苦笑しながら答えるも、
紙と顔を何度も交互に見られた事に対して、
虚しさと、悲しさで笑う事しか出来なかった。
「でもさぁ。さんクラグはどうするの?」
「あれだけ運動神経が良いんだもん。運動系が良いと思うよ」
「ラクロスなんてどう?
ユニすっごく可愛いよ」
「弓道部は?
さん、袴に似合そうだし」
本人を無視し話しは盛り上がった。
「柔道なんてどう?」
「バスケは?」
「陸上で棒高跳びとか!」
更に盛り上がりを見せるが、
ドレもやりたいとは思わないんだよね・・・・
視線を外し、ココロの声をもらす。
見学に行っても、何も感じなかった。
コレがやりたい!と思うものが無かったのだ。
クラブか委員会をやらなければならない
そういう決まりがある。
委員会など、途中からの転校生に入る場所など無く
クラブを決めなければならないが、
どうしようかなぁ・・・
決める事が出来ず悩むしかなかった。
まぁ、その内決めれば良いか!
適当に答えを出し、違う話題を振れば
更に盛り上がり、1日が終わった。